泥濘と薔薇

北東北、海辺のベランダで育つバラの記録です。

空想のグラスから香る・しっとりとみずの匂い

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 肌にぴったりと暑い空気が、ゼリーみたいな被膜になって張りついている。湯気のような淡い霞に覆われた山の稜線も、三日月に湾を囲む港の向こう、見えるはずの水平線の在りかもゆらゆらと曖昧だ。普段から着物を着ている洒落たお客さまの水色の帯が唯一、涼やかで優しかった。白地に赤の矢鱈縞が入った日傘を持っておられた。帰り際に香るかすかな雨の匂い。

 

 

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意訳すると「もう暑くてやんなっちゃう」!です。気まぐれに雨が降って風が吹いて、瞬間的にわあっと涼しくなるんだけど、そのあとは蒸してもっと暑い。首すじに張りつく髪をくくって、朝から真っ赤な顔をして会社に行く。それでも、私は夏が好きです。

しかしあのお客さまはおしゃれで可愛らしかったな。すてきな夏の装いだった。

 

 

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バラもこんなに暑いのが続くとすぐ開いてしまって、もともと散りやすいジュードジオブスキュアなんて2日も保たなくなってしまう。でも朝の6時頃、本格的に暑くなる前のジュードさんはすごい。とても濃厚かつ爽やかな、柑橘や南国の赤くて甘酸っぱいフルーツの香りがする。あと、それに加えてくらくらするみたいな甘い白ワインの匂い。細身のフルートグラスから香るのが一番さまになる香りだと思う。

 

 

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蕊を大切に隠すジュードさん。

 帰宅して、ベランダで作業をしていると(小さい熊手を買ったので中耕をしていた)、おとなりから何やらぱちぱちと音がして、どうやら迎え火を焚いておられるようだった。そうか、今日は8月の13日だ。盆の入り。

精霊馬もおがらもないからどうかなと思うが、家人のお母さまと私の母が好きだった花を飾って、父と行った伊勢のお線香(五十鈴川のみず)を焚いた。あと、父母の好きだった歌を歌った。まだたぶん、あまりこういうことに気を張らないほうがいいから、これくらいにしておく。

 

 

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 盛りのころのジュードは明るい日の光の色をしている。夏の似合うバラだと思う。でも、褪色してアイボリーのような曖昧な色味になるとき、どの花より早く散る、そのしっとりと冷たい花びらを集めて手のひらに乗せるとき、私は「ジュードジオブスキュア」のその名前の由来を想う。フルートグラスの似合う素敵な香りに、夏の似合う花色をしたこのバラが、「日陰者ジュード」と名付けられた意味を想う。そこに少しの救いがあることを願いながら。

 

明日は晴れのち雨。少しは涼しくなるといいなあ。

 

 

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