不調のエヴリン
昨日の晩はぞっとするような荒天だった。一つ残したつぼみが大きくなり始めた今年の大苗・コンフィチュールがずっと心配だったけど、朝ベランダを見たら無事のようだった。ほっ。
他のはまだ見られていないから心配。
4月最後の出勤。通勤路の楽しみの八重桜は、きっと散り始めだ。
荒天の翌朝はいつも大好きな空模様で、地図で見るエーゲ海の多島みたいな雲が群れて点在している。それが山に壮大な影を落とし、強風に流されてどうやら東の方へ流れていくよう。春の風は気まぐれだ。
さて、今日の議題はこれ。真冬からずっと私の心中をお騒がせしているエヴリン。
クロロシス!!!!!
冬は枝がシワシワになって枯れ、初春に残った枝から弱々しいけれどサイドシュートが出てきて安心していたら、1番健康だった枝から出た新芽がクロロシス。絶対に根かなんかがいかんのよね。でも絶対元気になる。私には分かる。エヴリンを愛してるから。
クロロシスて何?というのをもう一度ちゃんと調べた。
-植物の葉中のクロロフィル濃度が不足している状態である。この状態の葉は黄色から白色となっている。光合成とそれによる糖の合成を行う能力が失われている-wikipediaより
-植物では光合成に必要な葉緑素であるクロロフィルの合成に鉄が必要であるため、鉄欠乏になるとクロロフィルが減少し葉脈の間が黄色になり、ひどい場合は白くなって枯れてしまう。これをクロロシス症状と呼ぶが、ちなみに人の貧血改善に鉄投与が効果的であることは古くから知られており、クロロシス(白化)とは鉄欠乏性貧血を指す錬金術師の言葉だった。-東京農業大学HPより
原因としては、
▪︎鉄やマンガンなど肥料のほかに含まれる土の微量要素が不足している
▪︎それを吸収する根に異常がある
▪︎土壌のphが偏っている
▪︎わからんけどなる
ということらしい。
確かに、冬から調子が悪かったから肥料は元肥ぶんしか入れておらず、微量要素が足りなかった、といえなくもない。土壌のphは、全く同じ土を使っているジュードジオブスキュアは元気だし……。
ということで微量要素の多く含まれた苦土石灰とミネラルを撒いてみた。アルカリに傾かないようにピートモスをマルチングするつもりだったのだけど、風が強くて昨日は断念した。今日はそれをやって、根を確認し、必要がありそうなら鉢サイズをダウンし、リキダスを灌水しようと思う。
きれいなエヴリン。
初代ニューウェーブとラマリエを癌種で廃棄したとき、自分でも引くほど泣いたしものすごい落ち込んで、新しいバラをたくさん買うことでしか立ち直れなかった。エヴリンがもしそうならまた新しいバラを買ってしまいそうだし(ユーステイシアヴァイが欲しい)、でも買い直したニューウェーブみたいに、やっぱりエヴリンじゃなきゃいやだとなってネットに張り付くことになりそうだ(カタログ落ち、憎し)。家人は依存先を増やそうねと言うけど、増やしてもコレ。
バラが好きやねんもん。しゃあないよね。
日々のことごと
風が強くて、朝晩は震えるほど寒い日が続いている。3月の終わりの1週間、長く続いた反抗期みたいな冬が終わる、そのご褒美とばかりに暖かい日が続いて、街の人たちがみんな薄着になってしまった。人目をわりと気にするタイプなのでしぶしぶ春服をひっぱり出したのだが、4月に入ってからこっちずうっっっと寒い。どうしても耐えられずに巻いているラビットファーの小さなマフラーだけを頼りにチャリンコとバスで通勤しながら、ここの人たちは1人1台自家用車だったな……と思い出してばかばかしくなった。外が寒くてもドアツードアならね。そりゃあね。
今日はストーブを焚いてやった。
冷涼な気候に向くと言われるアトラゲネ系クレマチスのウェッセルトン。絶対に枯れたと信じていたのに、奇跡の大復活です。クレマチスって本当にすごい。美しくて強くて儚い、それは愚かしくも愛おしい日本人が理想とするものだと思う。
家人に頼み込んで大好きな古着屋さんへ連れて行ってもらう。
さっきは寒い寒いと文句をつけたが、やはり今年は全体的には暖かいようで、途中で越える山々の装いが春のものだった。芽吹いたばかりの若緑と山桜の薄灯、常緑樹の濃い緑の隣にむきだしの枝々の茶がぽんぽんと入れ替わり、グラデーションではなく点描のようによく混じって、全体で春山の情景を作る。山粧う(よそおう)は秋の季語で、春は山笑う。
古着屋さんでは花柄のスカートをたくさん買った。ビルの多い地元では、春を感じる一番のものは人々のパステルカラーな装いであったことを思い出した。
マックが食べたいとわがままを言う。ビーフのハンバーガーとポテトを食べて満足した。高校生の忘れ物、「おれが店に入るといきなり混みだすんだ」という家人の言。
ホームセンターでバラの苗をひやかし、ユーステイシア・ヴァイがないことに胸を撫で下ろす。あったら買ってしまいそうな苗のいまのところ筆頭品種。
代わりに蕾付きのホワイトクリスマスがあったので存分に香りをかいできた。甘いフルーツの匂い!家人もうんうんと笑っていた。
そういえば、シャリファ・アスマはフルーツ香らしいのに、うちのはあんまり香らない。無添加のせっけんみたいな清潔な青い香りならちょっとあるが、ちまたで見かけるフルーツの強香と言う文句には当てはまらない。2株あってどちらもそうなので、もしかしたら私の鼻はある種の香気成分をキャッチしないのかもしれなかった。本当ならすごく残念だ。もしかしたら株の充実度の問題かもしれないから、シャリファにはこの春に期待!
南の開花報告を楽しみに、日々生きている。
がんばれ、バラちゃんたち。
やがて春になる
半年以上間が空いた。
年は改まり寒さはやわらぎ今日見た週間天気予報は最高気温二桁をつづる。こちらに越してきて初めてと言っていい、大寒波に襲われた長い冬に気持ちも塞いでいたのだけど、そろそろバラもクレマチスも新芽が出てきて、日に照らされるそれを見ているだけでしゅわしゅわと癒される日々が来る。
春。
去年夢にまで出てくるくらい惚れ抜いたクレマチス・水面の妖精。寒さの中で枯れたと思って放置していたら(捨てるのさえ億劫になるぐらい寒かった!)、なんと芽が出ているのを発見して、慌てて剪定したり肥料や堆肥を施したりした。
植物はなんて強いんだろう……。
早咲きのアトラゲネ系クレマチス・ウェッセルトンはつぼみまでつけてくれている。こちらも絶対枯れたと思っていたのに……生きていてくれて、ありがとうねえ🥲🥲
肝心のバラはというと、お気に入りのERエヴリンが絶不調だということ以外はたぶんいいんじゃないかな?
*アップルローゼス:パウルクレー
*デルバール:ヴィウーローズ
*デルバール:クロードモネ
*デルバール:シャトードゥシュベルニー(ベーサルシュート💕)
*ER:ジュビリーセレブレーション
*問題のER:エヴリン
*ER:シャリファアスマ
……と、こんな感じ。
全体的に去年より芽吹きがゆっくりめなのは大寒波の影響なのか、それとも北国の環境に慣れたのかな?
最後に今年からのニューフェイス🌹
買い直したニューウェーブと、初ローズドゥメルスリーのコンフィチュール!大苗なので今から春がとっても楽しみです(*´◡`*)
ベランダにだってアーチ(?)が欲しい、の話。おしまい
昨日は金曜日だから、と帰りに本屋さんに寄ってみたら村上春樹の「村上T」が売っていて、ノータイムで買ってしまった。ふんふんとして帰って家人に話したら「絶対にコアなファンしか買わないやつ!」と大笑いされた。まあ、いいですよ。私は大好きなんだから。ふんふん!
ちなみに私が一番好きなハルキの本は「遠い太鼓」なのだけど、バラを始めた当初、「ディスタント・ドラムス」というバラがあるのには心底驚いた。ちょっと調べてみて、それがトルコのふるい唄に基づくものでもハルキのエッセイに由来するものでもないと知って少し安心したのだが、やっぱり私にとってディスタント・ドラムスは特別である。あんまり特別すぎて、まだ写真の向こうから眺めているだけでいい、手元になくても、どこかで綺麗に元気で咲いてくれていればいい、と思うバラ。
調べてみると、ディスタント・ドラムスは古いイングリッシュローズのザ・ヨーマン(The Yeoman)の子であるらしかった。写真のクリスティアーナはジェフ・ハミルトンの子。心惹かれるバラにイングリッシュローズの血が入っていることが多いのは、気のせいではないと思う。
ベランダのアーチ(もどき)に咲かせるバラを、イングリッシュローズに限らず考えよう、と決めたとき、じゃあ交配親にイングリッシュローズを使っているものにしようとすっと決めてしまったのは、春にインスタで見たクリスティアーナがあまりにも美しかったからだった。アーチに咲かせるのは、だからクリスティアーナでも勿論よかったのだが、寒冷地ではあまり伸びないらしい上に初期成長もゆっくりだという。すぐに大苗で迎えたけれど、未だに背丈は1mもないので本当なんだろう。アーチにはとても足りない。
交配について、調べた限りのバラを記録しておく。↓の本からの引用が多いです。
イングリッシュローズを交配親に持つ品種(一部特殊)
◆B.J.Buck氏:ディスタント・ドラムス (September Song × The Yeoman)
◆吉池貞藏氏:真宙 (Amber Queen × Engrish Heritageの実生)
◆メイアン:ボレロ (Kimono×Sharifa Asma)
◆メイアン:プリンセス・シャルレーヌ・ドゥ・モナコ (Louis de Funès × (Pink Panther × Graham Thomas))
◆デルバール:ナエマ (Grand Siècle × Heritage)
◆デルバール:ビアンヴニュ (Abraham Darby × ? 推定)
◆ギヨー:ヴェルシーニ (Davidof × Graham Thomas)
◆ギヨー:ソン・イデ・ジャルダン (Mirabella × Golden Celebration)
◆ギヨー:ポール・ボキューズ (実生 × Graham Thomas) × Davidoff
◆コルデス:ケルナー・フローラ (Geoff Hamilton × 実生)
◆コルデス:マリー・ヘンリエッテ (Geoff Hamilton × (Arioso × 実生))
◆コルデス:クリスティアーナ (Geoff Hamilton × 実生)
◆ギヨー:ソニア・リキエル (Yellow Cushion × Aloha)x ((Chaucer × Aloha)× (Iceberg × 実生))
……と、私が調べた限りだとこんな感じ。実に多彩なバラたち!これに孫世代まで入れたらどうなっちゃうんだろう。交配、奥が深い……。
この中でソニアリキエルはイングリッシュローズの銘花・アブラハムダービーと交配が似ていて、「Yellow Cushion × Aloha」を親にして生まれたのがアブラハムダービー。なので、花の感じも似ている………らしい。(私はダービーを所持していないのでわからないけれど、持っている方のコメントでは似ているところもあって面白い、とのことだった。兄弟ってそんな感じよね)
実はアブラハムダービーもすごく欲しい!と思い調べたらカタログ落ち。仕方のないことではあるけれど、残念……と沈んでいた気持ちを、ソニアリキエルに救われたような気がして、とても嬉しかったのを覚えている。
上記にあげたバラもどれもとてもとても素敵で、特にプリンセスシャルレーヌドゥモナコは「いつか欲しいものリスト」に4回くらい書き込んでいるけれど、今回私のベランダのアーチにはソニア・リキエルに咲いてもらおう、と決めたのでした。
アーチ(もどき)の話、おしまい!
だらだらと長く書いてしまった……。最後まで読んで下さった方(もしおられたら)本当にありがとうございます。お優しい皆様が近日中に2億坪の土地を突然手に入れられますように……😋💕
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ベランダにだってアーチ(?)が欲しい、の話。その2
この間に続いて、「アーチに咲かせたいバラ」についての話をします。これはいつか持家になって2億坪の土地が手に入ったときに役立つかもしれないので、ちょっとこの機に幅広く考えていきたい。
前回↓
一番理想に近かった「オールドローズ」がほぼ一季咲きだったので、次はイングリッシュローズを考えてみよう、の巻です。
ちなみにDA社によると、アーチに向くバラは「繰り返し咲く品種や、咲いた後に実をつける品種がよいでしょう」ということだった。正直、実のことを考えたこともなかったので驚く。バラの実について知っていることといえば……ロサオリエンティスのオデュッセイアは花後に鑑賞価値のある実が成る、と説明があったことを覚えているくらいだ。でも実が成るほど長く、花を咲かせて枯れるまで、という道程をたぶん私は見ることができないと思う。だって株が疲れちゃうじゃん!とか言ってカットしちゃうから。単純に気が短いのだ。
しかし、花期が日本より短いというイギリスでは、花が終わったあとに残るものもとても大事なんだろう。緑と雨の多い土地で実る赤や黄味がかったオレンジのローズヒップはきっと愛らしく、そして人間の心だけでなく身体の滋養にもなるのかもしれない。そういう、国土に培われた感性の違いというのはとても好きだ。
(話が逸れるがイギリス人のERの好みやお国柄が見られて割と好きなやつ。↓)
閑話休題。
まず、デビッドオースチンは公式で「アーチに向くバラ」というカテゴリを作ってくれているので、それを見てみることにした。
私のこだわりに合う花色のバラ(圧迫感のない淡い色)は、
◆ストロベリー・ヒル(淡桃)
◆クレア・オースチン(白)
◆ガートルード・ジェキル(濃桃)
◆クラウン・プリンセス・マルガリータ(杏)
◆ザ・ウェッジウッド・ローズ(淡桃)
◆ジュード・ジ・オブスキュア(杏)
◆ジェームズ・ギャルウェイ(淡桃)
◆バスシーバ(杏)
などだった。
なるほど………なるほ…………ジュード?ジュードジオブスキュア??アーチ……そんな大きくなるの!??
香りの良さの誉れ高いER、ジュードジオブスキュアは去年の冬に届いてから元気に成長して、今は130cmくらい。オベリスクに軽く巻いているが、そんなに大きく…なるの!?今のところ同時に購入したエブリンの方が伸びて170cmくらいだ。成長がゆっくりなのかもしれないね。
よし、冬にできるだけ短く剪定する覚悟をしました。ベランダはまだ大丈夫です。
花の好みで言うと、ストロベリーヒルとクラウンプリンセスマルガリータがいい。ストロベリーヒルは棘の少ない枝がしなやかで花色が可愛らしく、ミルラ香が芳しいと聞く。マルガリータ姫はもう、花色がばつぐんに好みだ。黄金や山吹や檸檬が混じりあって溶けあって、パレットをサッと出してきた天才画家が「そらお前の好きな色はこれだろう」とか言ってくるみたいな色だ。大好き。それにフルーツ香もあるとか……。最高じゃないか。
ただやっぱりいいところばかりではない(これは勿論ベランダ栽培でもう場所がほとんどない私が無謀にもアーチもどきに挑むにあたって、の話)。
ストロベリーヒルは横張り樹形で、これには参った。私はロサオリのダフネとデルバールのシャトードゥシュベルニーの横張りにはちょっと恐れをなしているのだ。あの横幅があれば直立樹形のバラを2本は増やすことができると思う(できない)。アーチもどきにするからにはある程度場所は確保しているが、横張りなのはいただけなかった。
マルガリータ姫は、とにかく巨大化する、と色々なブログで拝見し、怖気づいた。そして横張り樹形で(また……)、ほぼ一季咲きに近いとのこと。悩んで悩んで、カートに入れて、悩んで、削除した。諦めたのではない。「いつか欲しいものリスト」にいれたのだ。
イングリッシュローズがいいなあと思ったのは、カタログ落ちという恐ろしい現実があるからでもあった。そうなっても許可を取って販売して下さるお店も確かに存在するが、ほとんど廃盤と同じ意味だ。「いつか欲しいものリスト」にいれたバラが永遠に手に入らなくなる、それは正直に恐怖である。
例えばコマツガーデンさん(直営店名ロザヴェールさん)ではカタログ落ちした品種を取り扱って下さっているが(うちの元気で美しすぎるエブリンはコマツさん出身!)、前期にはイングリッシュヘリテージが取り扱いがなくなり、今期はシスターエリザベスやヒースクリフが在庫限りで販売終了となるみたい。残念極まりないことではあるが、仕方がないことでもある。ほとんどの品種には後継品という感じのものが発表されているようだし……(でも悲しい)。
まだカタログ落ちしていないイングリッシュローズは「いつか欲しいものリスト」にたくさん入っている。ヤングリシダスやベンジャミンブリテン、テスオブザダーバーヴィルズが載っているそのリストに、ストロベリーヒルとクラウンプリンセスマルガリータを力強く書き入れ、絶対に廃盤になるなよと呪いのような祈りをしつつ、さて、次の候補はもう決まっている。
イングリッシュローズを交配に使ったバラを、アーチに咲かせてみたいじゃないか。
次で最後です。
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ベランダにだってアーチ(?)が欲しい、の話。
春のバラ園、満開を迎えた色とりどりのバラが何種類も絡んだアーチのトンネルをくぐる。風が吹くと、世界中のただ綺麗な色だけを集めた花びらが降ってくる。いばらの間から日差しが差し込み、花びらは身の回りを小さな嵐になって舞う。きっとその風はバラの香りに草の花木の花の香りがするのだ。
こんなにバラが好きなのに、バラ園に行ったことがないからこういう妄想ばかりしてしまうんだよね。夢でもいいから行ってみたくて、でも最近ほんとに悪夢ばっかり見るものだから、ソニアリキエルを物干し竿に引っかけてアーチもどきにしちゃったのだった。少しは感動を味わえるかと思って……。
しょせん物干し竿だけど………。
結果は、まあ、わりといい。とても良い。バラ大好き。
引っかけているだけなので、アーチというには程遠いけれど、降るように咲くバラを見上げるのがこれほどワクワクするものとは思わなかった。曲がる支柱や後ろのラティスを使ってワイヤーを通したり、冬場に色々やるつもりなので本当にアーチ(もどき)になるのは先のはなしではあるのだけど。
そもそもこのアーチもどきにするバラにはちょっとしたこだわりがあった。お庭で本物のアーチを建てておられる方には全く参考にならないが、「アーチに咲かせたいバラ」について私なりのこだわりを、私のためだけに記録しておこうと思う。
◆こだわりその1:頭上の圧迫感を少なくするために、淡い色のバラにすること(白〜淡桃、淡杏)
◆こだわりその2:四季咲きであること
◆こだわりその3:枝が普通よりもかなりしなやかなこと(可動域が広い)。
◆こだわりその4:生い茂ったときの光の透過を考えて、葉っぱはできるだけ小さく薄くマットなものであること
◆こだわりその5:個人的に譲れない、強香種であること
以上の5点。耐病性が高いに越したことはないし、トゲも少ないほうがいいし、花弁が多いバラのほうが好きだ。けれど、ここではあまり重要視しないことにした。
条件に合うバラを探す。1番に思いついたのは「オールドローズ」だった。しなやかで野趣の趣きふかく、素朴で華やかという属性を美しく共存させるバラたち。うちにオールドローズは一株もないから、せっかくだしこの機会に!
ちょうど手元にオールドローズの本があるので舐めるように読む。カップ咲きが可愛らしく、枝が素直なブルボン系の「マダムピエールオジェ」、バラらしい芳醇な香りが魅力のダマスク系の「レダ」、葉が幼いように小さくマットで、なによりしなだれるように咲く姿の愛らしいケンティフォリア系の「ジュノー」の中で選ぼうかな、と思って、調べた。うん、ほとんどが一季咲きだね。
ここで当たり前のことを思い出した。オールドローズはもちろん、アーチにできるようなつるバラは基本的に一季咲き(または弱い返り咲き)である。
(ただ、あとで調べたところポートランド系のコンテドシャンポールなどはかなり理想に近いような気がした。伸びはばが気になるところではある)
世界一愛されているつるバラ、ピエールドゥロンサール。これも、株が育つまでは一季咲き〜弱い返り咲きだったはず。家人の同僚さんのお家のピエールさんがちょっとすごすぎるだけで。
こちらです↓
ここでオールドローズの夢は潰えた。しかし天啓も下った。ガーデンローズ界では、1961年以来「オールドローズの花姿を持ち、かつ四季咲き性を兼ね備えた」バラが発表されている。故David・C・H・Austin氏、偉大なるイギリスの育種家が遺してくれた、類まれなバラたち。
まだ私にはイングリッシュローズがある。
というわけでイングリッシュローズに焦点を変えることにする。
(ジュビリーセレブレーション。愛すべきかの国の女王のバラを作りだせたことを、オースチンは誇りであると述べていた)
とはいえとっても長くなってしまったので、続きものにすることにします。バラってとっても奥深いね!
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黄金の海と水平線、香りの女王の話。
3年と半前に越してきたこの地の、バスに乗って職場を行き帰りする道は好きな風景であふれている。春は目を皿のようにしてバラを探していたけれど(そして良いスポットをいくつか見つけたので毎日ガン見している)、今のトレンドといえば、そりゃもう田んぼです。
降りるところの3つほど手前の駅の周りは、見渡す限り田んぼが広がっていて、これがもう……もうね……胸が熱くなるんだ。
(贅沢な景色、ずーっと感動しっぱなしなのだけど、家人はいつもの景色よ、という感じ。贅沢!)
田んぼ、それ自体はうちのベランダからも見えるし(最高にきれいなの!)、その駅の360℃パノラマ田んぼの何がそこまでいいのかって、水平線を臨めるのだ。
この土地は必要に迫られて高さ10m越え(くらいだったと思う)の、高い高い堤防が作られている。まだ足場を組んでいるような工事中から立派な堤防になるまで、ずっとその様子をベランダから眺めていたので、それに対してちょっとした思い入れはあるのだが、近くへ行っても海が見られないのは寂しかった。
そういうわけで水平線というのは坂を登ったりしないと見えないのだけど、そこの駅はお山の上の方だから、まっすぐに見晴らすことができる。熱にうかされたように日に輝く水平線と、緑の海だ。
東北の今この季節、こうべを垂れる稲穂はほんのりと緑が抜けかかかっているところ。黄金の季節が待ち遠しい。それはそれは綺麗なんだ、本当に。
今日は今春のアカデミアのお話をしたいと思っていたのに、バスからの風景ですっかり昂奮してしまったな。
赤とピンクが絶妙に混じりあって溶けあった、カーマインレッドというのが近いような色のバラは、私の愛すべき香りの女王、アカデミア。イタリアはトスカーナ州のバルニ社で作出され、2014年に日本で発表されたバラで、女性育種家の方の作出だそう(ベアトリーチェ・バルニというその女性は、イタリアの方らしくどの写真を見ても太陽みたいに明るい笑顔だった)。
2枚目の写真は今日撮ったものだけれど、後ろの緑の海がいずれ黄金の稲穂になる田んぼです。ああ、アカデミアはもう背丈が1.8mになってしまった。樹高80cm〜1mって書いてあったんだけどな……?
アンティークで洗練された雰囲気のバラ。
イタリア・ピエモンテ州のガーデンアカデミー
「Accademia Piemontese del Giardino」にちなんで命名。
モンツァコンクールでは「最も香りの良いバラ」に選ばれた。
程よくまとまりのある樹形で、色々なシーンに合わせやすい。
(-河本バラ園公式サイト商品説明より)
単花咲きにもなるけれど、2〜3輪の房咲きが多い。ベーサルシュートの発生が本当に良くて、去年も今年も3本ずつぐらい出た。枝は真っ直ぐ上に伸びて場所をとらない。濃緑の葉っぱはかすかに照り葉で、なにかの間違いのように伸びた細い枝の葉っぱには黒星が出るけれど、とにかく樹勢が強いので全く問題はないと思う。
育て始めてから悩んだのは樹高だけだ。なにしろ枝が太くて硬いのでせっかくのお花が見られないし、香りもかげないのだ。
そう、香りである。アカデミアは、Twitterでも何度も言っているけれど、香りが、あまりにも、良い!!
南国のフルーツの香りがする。マンゴーやパパイヤやメロン、果汁の多くて色鮮やかな、湿度の高い国の活き活きとした商店で香るあの匂いがする。スコールがある国の、朗らかで力強い人々が暮らす国の、暑い夏に漂う、とろりとした甘い香り。あまりにも好きだ。もし万が一枯れてしまっても絶対に買い直すと思う。
香りのことはここにも書いていますね。なんというか、雰囲気でわかってもらえると嬉しい。
美しく香りよく、稲穂の海をバックにすっと背筋の伸びた、明るく凛々しいイタリア女性みたいなバラ。秋の深い花色と濃厚な香りが今から楽しみで仕方がない。
明日は35℃/23℃だという。ここは東北なのに???と思うけど、アカデミアが咲いてくれたらきっとその暑さも似合いのものになるのにな。つぼみはあるのでとりあえず写真で我慢して、涼しい場所にいましょうね。
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